「「観光情報学会 第7回全国大会 in 川越」 プログラムへ
観光情報学会 第7回全国大会 in 川越 概要集
----------9:30~11:30 口頭発表 (発表15分、質疑5分) 6名
- (9:30- 9:50)富田忠:広域観光と防災対策
- (9:50- 10:10)桑原政則:川越街中避難・観光地図
- (10:10- 10:30)倉田陽平: 対話型システムによる都市周遊計画の支援
- (10:30- 10:50)伴浩美、大藪 多可志:金沢市の英文観光パンフレットの計量的文体解析
- (10:50-11:10) 辻順平、山下晃弘、川村秀憲、鈴木恵二:あなた情報マガジン「びも~る」による地域を活性化する情報配信
- (11:10- 11:30) 細野昌和:外国人旅行者持参の情報機器利用受入れの課題
----------12:00~13:00 昼食休憩
----------13:00~13:30 開会式 他
----------13:30~15:45 パネルディスカッション 135分
テーマ「広域観光おこし」(基調報告1人10分程度+ディスカッション)
パネリスト:
(官) 笹森秀樹 (観光庁 観光地域振興課長)
(官) 稲葉尚子 (埼玉県産業労働部 観光課長)
(学) 松田義幸 (尚美学園大学 学長・理事長)
(地元) 粂原恒久 (小江戸川越観光協会会長、蓮馨寺住職)
(観光情報学会) 松原仁 (観光情報学会会長、はこだて未来大学)
(観光情報学会) 大藪多可志(観光情報学会副会長、金沢星稜大学)
コーディネーター:
桑原政則 (武蔵観研会長、東京国際大学)
----------16:00~17:00 ポスター発表
(1分間のプレゼン+別会場のポスター前にて説明 )
- 下村有子、大薮多可志、山本愛衣、前田佳那、趙暁陽:
特徴ある3温泉地の五感評価 - 河本祐幣・市川尚・窪田諭・阿部昭博:
携帯電話を用いたUD観光情報システムにおける広告配信機能の試作 - 工藤彰、窪田諭・市川尚・阿部昭博:
フィールドミュージアムにおけるまち歩き支援システムの試作 - 斎藤一:
北海道江別市の「やきもの」の特徴を分析するWebコンテンツの試作 - 沢田史子、林正治、上田啓未、堀井美里、堀井洋、吉田武稔:
ICTを活用した内発的観光開発推進
----------17:00~18:00 口頭発表 (発表15分、質疑5分) 3名
- (17:00- 17:20) 大内東、小川浩志、伊藤智教:大学と企業の協働による着地型旅行商品開発の試み
- (17:20- 17:40)木村めぐみ:撮影地における観光現象と情報
- (17:40- 18:00)岡本健:「情報社会における観光コミュニケーションのあり方に関する一考察
口頭発表
広域観光と防災対策
富田 忠(防災士、NPO法人武蔵観研)
観光客等が安心して安全に街中を散策するためには、防災対策や防犯対策を推進する必要がある。
(1) 武蔵地域(南関東地域)は、M7クラスの地震がいつ発生して不思議ではない。
(2) 観光客は、地理に不案内であり災害時には支援を要する災害時要援護者(災害弱者)である。
(3) 観光客等に正確かつ迅速に災害情報を伝達するために、ハード、ソフトの両面から伝達手段を整備する必要がある。観光の裏には常に危険性が潜んでいるとの観点に立ち、観光と防災が共存する対策を考えてみたい。
川越街中避難・観光地図について
桑原政則(東京国際大学教授、NPO法人武蔵観研)
NPO法人武蔵観研は、川越の街中を安全に歩けるような避難・観光を合体した活字の大きい見やすいA2版の地図を作成した。 地図の特長は以下の通りである。 避難、防災に重点をおく。 避難場所、広域施設は緑であらわす。 観光スポットは、赤文字であらわす。 文字を大きく見やすくする。 町名など観光客にとって不必要なものは削除し、シンプルを旨とする。 トイレ、障害者用トイレを明示する。 病院、AEDを表示する。 難漢字にはふりがなをつける。 外国人用に英語表記も適宜入れる。 QRコードで防災情報にアクセスできるようにする。 観光モデルコースを表示する。 七福神の寺社は、矢印で次の位置を示し巡りやすいようにする。 川越市の関係者の協力のもとに作成する。この事業の成果と今後の展望について発表する。
【cf.】川越まちなか避難・観光地図
対話型システムによる都市周遊計画の支援
倉田陽平(首都大学東京都市環境科学研究科観光科学域准教授)
ガイドブックなどを頼りに興味深い観光対象を選び, それらを効率良く巡る計画を作成するのは,現地の事情に不案内な個人旅行者にとっ ては容易ならざる作業である.筆者はこの困難を軽減するべく,旅行者の日帰りの都市観光プランを作成支援する「旅行計画支援システム」を開発した.このシステムの特徴は,推薦プランに対する利用者の反応から利用者の嗜好や要求を学習し,プランを段階的に 洗練させていく対話的プロセスにある.これにより従来のシステムに見られたような利用者情報の事前登録は不要になり,利用 者は実際の観光プランを見比べながら柔軟かつスピーディに旅行計画を立案できるようになった.
あなた情報マガジン「びも~る」による地域を活性化する情報配信
辻順平(株式会社調和技研)、山下晃弘、川村秀憲(北海道大学複合情報学専攻複雑系工学講座准教授)、鈴木恵二(北海道大学大学院情報科学研究科教授)
あなた情報マガジン「び も~る」は、お祭りやコンサートイベント、名産品の案内、飲食店のクーポンなど、地域の魅力を伝える情報を携帯電話のメー ルで無料配信するサービスで、札幌を中心に運用されています。 びも~るは独自開発の興味解析エンジンに基づいて、利用者の興味ある 情報を予測して配信します。これにより、情報提供者はターゲットを絞った情報配信ができ、利用者は今まで気づかなかった新たな興味を 発見することができます。 情報提供者から利用者までの情報の流れを作ることで、市内や周辺地域からの観光や消費の需要を喚起し、地 域の活性化につなげたいと考えています。
外国人旅行者持参の情報機器利用受入れの課題
~ 総務大臣が購入したiPadを発端とするネット上の議論から ~
細野昌和(北海商科大学准教授)
Apple社が最近発売した次世代タブレット型パソコンとも言えるiPadは、液晶表示の性能や操作性の容易さ、通信機能などから地図情報のユビキタスな利用などに優れているといえる。原口総務大臣も日本発売前に米国で購入し話題となった。一方、そのWi-Fi機能は日本の規格を満たし検査を通過しているが、海外で購入したために「技適マーク」が 貼付されておらず国内使用は違法になるという。このことは、外国人旅行者が現在すでに持ち込んでいるラップトップPCやスマートフォンのWi-Fi機能など、実害のない電波利用も総て違法になることを意味する。こうした国際観光振興の現状と乖離した問題を総務大臣のTwitterでのやり取りなどネット上の議論の流れから紹介する。
大学と企業の協働による着地型旅行商品開発の試み
~R12背骨プロジェクトの事例~
大内東(北海商科大学教授)、小川浩志(道新ぶんぶんクラブ)、伊藤智教(道新観光)
R12背骨プロジェクトは、国道12号線(札幌 市―旭川市)を背骨と考え、R12に隣接する地域における地域観光資源の発掘と、これらの資源を核とした地域活性を目的と するプロジェクトである。本発表では、R12背骨プロジェクトの一環として、大学と企業が協働して開発を進めた着地型旅行商品の取り 組みについて紹介し、今後の議論の参考としたい。
金沢市の英文観光パンフレットの計量的文体解析
伴浩美(東京未来大学教授)、大藪 多可志(金沢星稜大学教授)
外国からの観光客を増やすことが, 現在, 金沢の観光事業の課 題の一つとなっている. その課題を克服するためには, 外国人 観光客に「言語サービス」を提供し, 外国人が観光しやすいよ うにしていく必要があると思われる. 本研究では, 言語サービ スの一面を把握することを目的とし, 金沢の英文観光パンフレ ットにはどのような言語的特徴が見られるのか, 日本政府観光 局発行の東京, 京都などのパンフレットと比較しつつ, 計量言 語学的な解析を行った. その結果を報告する.
撮影地における観光現象と情報
木村めぐみ(名古屋大学大学院国際言語文化研究科 博士後期課程2年)
近年、新たな観光地として映画やテレビドラマなどの<撮影地>に対する期待が高 まっているように思われる。既に、撮影地における観光現象についての研究は、欧米諸国で1990年代に、我が国でも 2000年以降発表されてきているのだが、本発表では、これらの専攻研究から<撮影地における観光現象>での「情報」の必要性を見出 し、そして、近年我が国で見受けられる幾つかの<撮影地に関する情報>を事例として提示し、それら情報の機能や役割を追究する。そ して、これまでの専攻研究で考察されてきた<撮影地における観光現象>が、こうした情報の増加によって新たな様相を見せ始めているこ とを実証していく。
「情報社会における観光コミュニケーションのあり方に関する一考察
~埼玉県久喜市鷲宮神社周辺地区(旧鷲宮町)と滋賀県犬上郡豊郷町の事例分析から~
岡本健( 北海道大学大学院 国際広報メディア・観光学院 観光創造専攻 博士後期課程)
ICTが発達し、また、人々がそれを活用することも多くなっている現在、情報通信技術を用いた旅行行動が様々な場面で見られるようになった。本発表では、アニメ聖地巡礼という、アニメファンがICTを駆使してアニメの舞台を発見し、そこを訪れるという行 動をとりあげる。特に、その受け入れ地域となった、いわゆる「聖地」を巡って、現実空間および情報空間で、どのような人と 人とのコミュニケーションが行われたのかを二つの事例を対象に分析する。そのことにより、情報社会において旅行者同士、旅行者と地域 住民、地域住民同士のコミュニケーションはどのようになされているのか、それを分析するためにはどのような枠組みが必要な のかを考察する。
ポスター発表
特徴ある3温泉地の五感評価
下村有子(金城大学社会福祉学部教授)、大薮多可志(金沢星稜大学教授)、山本愛衣、前田佳那、趙暁陽、
日本には3,000を越す温泉地があり、多くの人々が訪れている。訪問の目的は多種多様であるが、主に癒しやリフレッシュを求め訪問する。癒しやリフレッシュは五感により感じる。本研究では、各々特徴ある3温泉地(草津温泉、和倉温泉、山中温泉)でアンケート調査を行い、各温泉地は五感に如何に影響を与え、癒しやリフ レッシュが達成されているかを分析した。調査した温泉地はニオイで有名、味覚が 売り、景色が美しいの3つのジャンルに分類できる。分析結果では、3つの感覚のみ で満足度が高い、全てを体感しないと満足しないなど場所により特徴が異った。年 齢別では、50代を境界として五感の特徴が大きく変化することが明らかとなった。
携帯電話を用いたUD観光情報システムにおける広告配信機能の試作
河本祐幣・市川尚・窪田諭・阿部昭博(岩手県立大学ソフトウェア情報学部)
我々の研究グループは,岩手県奥州市にある歴史テーマパーク「えさし藤原の郷」をフィールドとして,携帯電話によるUD(ユニバーサルデザイン)に配慮した観光情報システムの開発を行ってきた.実用化に向けて,園内の回遊行動の促進などが要望として挙げられている. 本研究ではUD観光情報システムにおける広告配信機能を試作した.UDに配慮した効果的な広告提供のために,ユーザ属性に応じたセグメンテーション型を中心とし,コ ンテンツ連動・行動ターゲティング・日付時間連動といった他の広告配信手法を組み合わせた.なお本システムにおける広告は,購買行動 の促進だけではなく,イベントなどの回遊促進も含めている.
フィールドミュージアムにおけるまち歩き支援システムの試作
工藤彰(岩手県立大学大学院ソフトウェア情報学研究科博士前期課程2年)、窪田諭・市川尚・阿部昭博(岩手県立大学ソフトウェア情報学部)
近年,観光まちづくりの取り組みとして,フィー ルドミュージアムが全国各地で行われている.この取り組みにおける情報技術の活用として,パソコンからミュージアム全体の情報を閲覧するシステムの導入は進んでいる.しかし,町なかで利用するシステムは,観光客向けの事例が多く,「保存・活用・学び」の要素をもつミュージアムとして捉える視点は弱い.
本研究では,GPS機能付き携帯端末を用いて,ユーザの位置情報に応じて自動的に情報配信を行うシステムを検討する.プロトタイプとして,古地図や古写真,地域資源を表示させるシステムを開発し,まち歩きワークショップにて試用した.本稿では,開発したプロトタイプの概要及び評価について報告する.
北海道江別市の「やきもの」の特徴を分析するWebコンテンツの試作
斎藤一(北海道情報大学 情報メディア学部 情報メディア学科准教授)
北海道江別市では,毎年約10 万人が来場する「えべつやきもの市」を開催する等「やきもののまち」として政策を進めているが,江別市のやきものの認知度は低いのが現状である.我々は,IT を活用することで,江別市が「やきもの」を観光資源として有効活用できるよう支援することを目標に「えべつやきものプロジェクト」をスタートさせ,やきもの市でのアンケート調査や,やきものを活用したコミュニティblog サイトの構築等の活動を行ってきている.本発表では,このサイト用に試作した,自己組織化マップに基づいた江別市のやきものの特徴を分析するコンテンツについて説明する.
ICTを活用した内発的観光開発推進
-歴史資料活用システムと欧米人向け観光ガイドブログの事例から-
沢田 史子1,林 正治2,上田 啓未 1,堀井 美里1,堀井 洋1,吉田 武稔1
1北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科
2一橋大学 情報化統括本部情報基盤センター
近年,地域住民が自律的に地域資源を持続的に活用する内発的観光開発が注目されつつある.本研究では内発的観光開発を支援する歴史資料活用システムKuKuRIを構築した.そして金沢市の観光ボランティアガイドが歴史学研究者を含むNPOと協同し,KuKuRIを用いて観光コース立案およびガイド解説書を作成しガイド研修ツアーを行った実例を紹介し,KuKuRIによる内発的観光開発支援の有効性を示す.さらに,内発的観光開発推進のもう一つの事例として,地域歴史資料を活用した欧米人を対象とした観光ガイドブログ-Historical Walking Guide to Kanazawa-の紹介を行う.
パネルディスカッション 発表レジュメ
埼玉県の観光戦略 -超観光立県をめざして-
稲葉尚子 (埼玉県産業労働部観光課 課長)
1 埼玉県の観光力
(1)入込観光客
ア 推移 イ 利用別・目的別観光客等内訳
ウ 再訪意向 エ 観光客消費額
(2)埼玉県の観光力ランキング
(3)埼玉県のブランド力
2 埼玉県の観光ポテンシャル
(1)埼玉県の観光ポテンシャル
(2)平成百景
3 埼玉「超」観光立県宣言
4 ニューツーリズムの推進
(1)産業観光
(2)グルメツーリズム
(3)アニメツーリズム
(4)フィルムコミッション
5 広域的観光の推進
(1)埼玉体験旅くらぶの開発
(2)外国人向け旅行商品 「True Japan 埼玉」
(3)鉄道事業者との連携
6 今後の方向性
世界遺産による観光産業の革新
松田義幸(尚美学園大学 学長・理事長)
1. 世界遺産登録の視点
世界遺産に登録されると、観光客が3割増えるといわれている。ならば、自分の地域の観光資源も登録しよう。
私の郷里の山形も、かつて、出羽三山の六十里越古道を世界遺産に検討してみた。それが難しいとわかると、次は最上川の検討に入った。
しかし、それも可能性がないとわかり、申請を凍結した。
私は何度か、山形県にでかけて、世界遺産の検討の視点について、プレゼンテーションをした。
私は世界遺産の登録なのだから、人類に対する説得力のある見せ方に工夫が必要だと主張したのである。山岳宗教という日本固有の文化であっても、その固有性と同時に、グローバルな「地球市民・地球社会」に対する共通価値、普遍価値をプレゼンテーションすることが大切だと考えていたからである。
出羽三山は、今から1400年前に、崇峻天皇の皇子で、聖徳太子のいとこの蜂子皇子が開いた、死と再生の修験の山である。私がこの出羽三山を中心に、1989年の『奥の細道』紀行300年祭、1993年の出羽三山開山1400年祭のプロデュースの手伝いをしたこともあって、世界遺産のプレゼンテーションに、早くから関心を抱いていた。
しかし、この視点が理解されることはなかった。
2.「紅花の山形」の不思議な縁
山形県上山温泉の旅館「古窯」の湯殿の壁に、詩人真壁仁の「絹は西へ/紅花は東へ/シルクロードは/紅の道だった/ナイルの岸にたどりし/紅花のふるさと/遥かなりき」の詩がかけられている。花の山形の「紅花」がナイルの賜物であったのだ。そのナイルの水源が、モンテ・ルナつまり月山を意味していた。シルクロードを通じてエジプトが原産といわれる紅花が日本に伝えられ、江戸時代に山形紅花が質・量ともに日本一のブランドになり、最上川を下って全国に届けられることになった。その最上川の主水源も月山である。その象徴的意味について調べてみると、遥か昔の母権制社会の月母神・大地母神・高座の巫女の三位一体であった太古の面影を今日に伝えていたのである。なんとファンタステイックなことであろうか。ナイルの水源については、古代ギリシアのヘロドトスも関心をよせていたのだが、それが明らかになったのは、リビングストンの後を継いだスタンリーの1890年の発見による。現在のルウェンゾリである。私は今年の2月に、山形新聞社主催の県勢懇話会で、「紅花ルネッサンス山形―山形観光の原点」と題し、「山形観光の精神性の象徴は紅花と出羽三山、最上川であり、これらを関連付けた観光アイデンテイテイを確立していくことが大切だ」と繰り返し提言してきた。
3.ソフトパワー・モデル「世界遺産戦略」
なにも、山形県だけでなくユネスコ世界遺産プロジェクトから観光政策を検討することは大切なことだと思う。
サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』の問題提起から早いもので20年になろうとしている。世界の現在は、民族間の対立・紛争・テロ・戦争に対し、かつてのように、政治力、経済力、軍事力のハードパワー政策だけで問題解決を図ることが難しくなってきた。そこで同じくハーバード大学のジョセフ・ナイ教授は、異文化・異文明の相互理解促進のために芸術・文化・スポーツ交流のソフトパワー政策にも力を入れるべきだと提言したのである。その具体的政策モデルが、ユネスコの世界遺産プロジェクトだと思う。
ユネスコは国際教育機関である。その世界遺産プロジェクトが、軍事予算に比べればはるかに少ない予算で、ユネスコ憲章の「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和を築かなければならない」のミッションに応えているのだ。
川越観光の将来について
粂原恒久 (小江戸川越観光協会会長、蓮馨寺住職)
川越は鎌倉時代以降、関東における指導的役割を担い、常に中心的存在として、歴史の流れを作ってきたのであります。
川越太郎が埼玉の主要部に号令し、戦国期には川越城の覇権が関東の勢力圏を決し、徳川時代においては、大江戸の文化治世を、食料や物資の供給によって支え続けたのであります。近現代にあっても、県下で最初の市制を敷き、歴史の教訓と政治経済の拠点として埼玉の地をリードしたのであります。
いわゆる六十年安保改訂論議で、国中が揺れる中、当地の識者はマチの発展は観光にありと達観、観光がもたらす経済、文化、しいては教育等の多方面にわたる波及効果を認識、各地に先がけて観光協会の設立を画したのであります。爾来、川越は歴史と伝統のマチとして衆目を集め、昭和五七年から平成一九年を比較してみても、来訪者は4倍に達し、NHKの連続ドラマ放映を契機としてさらなる増加を見るに至ったのであります。又再訪客も多数を占め、的確なる観光施策がなされれば、今後さらなる高品位の観光状況が期待されるところであります。
さて、現況としての当地の観光を考えてみると、
1) 近隣地域からの来訪者が多く
2) 観光時間が短い(半日以下)
3) 消費金額が少ない
4) 蔵造りの町並みと周辺への来訪が圧倒的に多く、続く諸拠点への回遊率が低い
等々の特色みられるのも確かであります。これらを是正することは、喫緊の課題とも言えそうであります。そのため
1) 遠方からの観光客を誘致し
2) 観光滞在時間の延長化を計り
3) マチ全体を巻き込んだ拠点相互の連続性を計る施策が今後の課題になることは言うまでもありません。
既に市当局や関係各位の尽力によって、鏡山跡地の活性化が計られ、各拠点をつなぐスポットとしての役割を担う努力がなされていますが、更には歴史的遺産としての旧絹織物市場、旧鶴川座の復興等も、蔵造りの街と喜多院地域を結ぶスポットとして、速やかに計画が実行されるべきではないでしょうか。
又、ソフトの面から眺めた場合、来訪者が川越に期待し、又発信すべき「心」の面の必要性を感じるのであります。川越の心とは、私は「やすらぎ」「和(なごみ)」「歴史に学ぶ先進性」ではないかと思っております。このソフトの面を充実(アピール)させることによって、人々は景観の中に深い精神をくみ取るのであります。
その為には、
1) 川越の寺社を「心のより所」として、来訪者に更に何らかのメッセージを伴って開放し、参加型の修練の場とする
2) 華道や茶道という歴史的伝統を支えた文化活動を更に活発化し、多数在住する斯界教師の方々に観光拠点でのアピール、展開を推進して頂く
3) 観光拠点(蔵のマチや喜多院、氷川神社等)を、創成者や維持に尽力した「人の心」を中心に説明し直すなど、スピリチュアル拠点としてのマチ全体の性格を更に高揚させる事も不可欠なる要素になってくるものと考えます。又、伝統芸能や川越産品の振興、他との差別化や、特産品(川越茶も含め)の再製なども「川越の心」を伴いつつ推進してゆきたいものであります。雑駁ながら討論の基調として、お考えくだされば幸いです。
広域観光について
松原 仁(公立はこだて未来大学、観光情報学会会長)
日本人の人口が減りつつあることから、観光客の人数の定常的な増加はもはや期待できない。多くの人に来てもらうのが無理であれば、来てもらった人になるべく長く滞在してもらうしかない(外国人観光客を増やすことも重要であるが、ここでは触れないことにする)。1泊2日から2泊3日に滞在期間を 延長してもらうためには観光のコンテンツを充実させる必要がある。その有力な候補が広域観光とされている。広い範囲を移動するためには長く滞在しなければならないからである。
広域観光は日本のこれからの観光振興にとって有力候補であるが、それをスローガンだけでなく定着させるためには解かなくてはいけないいくつかの問題があると思われる。それを筆者の地元を例に考えてみたい。2010年4月に北海道の南部(地元では道南と呼び、ほぼ渡島半島全体で長万部以南を指す)の2市16町がまとまって「はこだて観光圏」として広域観光の対象に観光庁から認定された。テーマは「食」となっている。道南の観光も下降傾向にあるので、地元としてはこの広域観光の認定を契機に活性化を目指しているところである。しかし実際に広域観光をしてもらうまでのハードルは高い。確かに道南はおいしい食材が多いが、18市町のそれぞれによく知られている料理があるわけではない。また道南に広げなくても函館だけでもおいしい食事ができるのではないか、さらには函館にわざわざいかなくても札幌に行けば北海道のおいしいものが何でも食べられるのではないかと多くの日本人は思っていると思われる(たとえば函館に観光に来て土産としてカニを買う人が多いが、函館近辺でカニは取れないので地元の人はカニを食べることは少ない)。札幌では北海道各地の本当においしいものは食べられない、函館では道南の本当においしいものは食べられない(たとえば奥尻島のウニは奥尻島に行って食べないと味はわからない)ということは実は地元の人しか知らないのである。そこに行ってしか食べられない料理を用意するのは(いまのように流通が発達した現在では)むずかしく、さらにはそのこと(本当においしいものは各市町に行かなければ食べられないこと)を観光客にアピールするのもむずかしい。
道南は広い(道南を独立した都道府県として見ると面積の広さは上位に入る)ので観光客が移動するための足の確保も大変である。公共交通機関はJRとバスであるが、本数が少ないので乗りついで道南を巡るのはかなりの時間がかかる(無銭旅行の学生ならともかく、ふつうの意味では非現実的である)。いま現在道南を巡るのは団体バスに限られているが、団体旅行では満足できない観光客が増えているので、いまさら広域観光で団体バスだけの対応はありえない。個人客はレンタカーに乗るしかないのが現状であるが、環境問題などの点から望ましいとはいえない。本気で広域観光をうたうのであれば、函館空港からあるいはJR函館駅(将来は新幹線の新函館駅=仮称=から)各市町まで移動する公共交通機関を整備する必要がある(たとえば函館空港から江差に行くルートを整備してそれを観光客に周知しなければならない)。
縦割り行政の弊害もある。18市町が一緒になって「はこだて観光圏」を構成しているが、基本的にそれぞれの市町は自分のことしか考えていない。広域観光を成功させるためには地域が運命共同体として行動する必要がある。たとえばいまは函館空港やJR函館駅の観光案内所ではほとんど函館市内の観光しか案内していない(空港や駅が函館市内にあるためである)。隣の市、隣の町に行ったらこんなにいいことがあるという宣伝を各市、各町が本気でやるのか現状ではあやしいと言わざるをえない。行政の意識を改革するのはそう簡単ではない。
以上「はこだて観光圏」を例にして述べたが、他の地域の広域観光も同様の問題を抱えているはずである。どうすれば解決できるか考えていきたい。
早急な中国からの訪日客に対する広域観光策が必須
大薮 多可志(金沢星稜大学、観光情報学会副会長)
今年度の日本の名目GDPは470兆円程度と予測されている。隣国中国は,僅差ではあるが今年度中に日本をしのぎ世界第二位になる。人口は約13億人と日本の十倍ある。簡単に割り算すると一人当たりのGDPは日本の十分の一であるが,人口の一割が富裕層といわれ,日本の人口に匹敵し、その人たちは平均的な日本人より裕福であり消費行動が旺盛である。文化の違いもあるが,現在の日本人の消費行動とは大きく異なる。バブル期の日本と似た側面がある。
昨年,日本を訪問した訪日外客数は、(独)国際観光振興機構(JNTO)によると約680万人,2008年の835万人から大きく減少した。内訳をみると,韓国160 万,台湾102万,中国100万,米国70万となっている。この中で前年度より僅かであるが唯一増加したのは中国である。中国人訪日客の購買力がマスコミに取り上げられ話題をよんでいる。中国のGDPと観光客の伸び率に注目すべきである。伸び率が大きく人口の大きな国に対する観光プロモーションが大きな効果を発揮する。観光産業は何よりも中国にターゲットを合わせるべきである。もちろん,韓国と台湾へのプロモーションも従来通り必要である。2008年の外国人訪問者が多い国は、フランス(約8000万人)、アメリカ、スペイン、中国と続き日本は28位であった。GDP当たりの観光収入でみると、スペイン(11%)、オーストリア(6.4%)、スイス(5.1%)と続き日本は僅か1.9%である。これらデータの底上げが国際化や観光立国を目指す日本には必須である。
各国の日本訪問率(日本訪問者数/出国者数)も考慮した方策をたてることも効果がある。この値が小さいことは,潜在能力があり観光プロモーションさえ整合すれば,訪問者数を増やせる可能性がある。幅広い観光資源の提供と準備が必要である。日本全国が観光資源となる体制が求められる。ショッピングから滞在型資源の売り込みへのシフトも重要である。日本の技術力から”文化力”をプロモートする方策へのシフトが強く求められている。政府は2013年の訪日外客数を1500万人に設定した。目標達成には,日中の地方都市間を結ぶ定期航空路開設をベースとした幅広い増加策が望まれる。地方同士の交流が日本の一極集中化をも解決する糸口である。地方訪問者増加策が地方を活性化するトリガーとなる。地方訪問者が増えることにより,日本全体が観光資源となる。
日本の空港のほとんどが赤字である。新幹線が充実し乗客が奪われるとさらに厳しい状況を迎えることになる。外国(特に中国)地方都市と日本の地方都市の定期航路の開設による適宜な交流人口の増加策が大きな効果を生む。外客訪問領域も広域化しつつある。これは,外客旅行形態も団体から個人旅行へ移行しつつあり,多様なニーズを求めているからである。これに応えるためには広域観光により様々なメニューを提案していく必要がある。このためには,観光情報のデータベース化とインターネット利用は欠かせない。日本のブロードバンドレベルやIT化は世界でもかなり進んでいる。今後の日本観光産業の活性化には地方広域圏を含む広域観光資源の情報発信と提供が鍵となる。